世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)

【あらすじ】

第21回(1985年) 谷崎潤一郎賞受賞
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

村上春樹の不思議の国w 毎回ながらアマゾンの内容説明は酷い場合が多い笑

非常に面白かった。良い小説でした。

深層意識である「世界の終り」と現実世界である「ハードボイルド・ワンダーランド」が交互に描かれている。

ハードボイルド・ワンダーランドの方は少しSF的な話だった。
ハードボイルドな話だなあと思った。
読みながらに心が満たされる本だった。この主人公好き。
今までの春樹に感じなかった熱量をもった文章があるので好感が持てる。

“しかしもう一度私が私の人生をやりなおせるとしても、私はやはり同じような人生を辿るだろうという気がした。何故ならそれが−その失いつづける人生が−私自身だからだ。私には私自身になる以外に道はないのだ。どれだけ人々が私を見捨て、どれだけ私が人々を見捨て、様々な美しい感情やすぐれた資質や夢が消滅し制限されていったとしても、私は私自身以外の何ものかになることはできないのだ。”
泣かせられる。

最後に影を壁の外へ逃がし、森の中で生きると決めた主人公だけど、現実世界の主人公はどうふるまうことになるんだろうか?意識は消失しても心は持ってるということかな。
この結末が評価分かれるポイントなんだろうけど、この結末だからこそのハードボイルドであり、この小説が意味を失わないのでしょう。


どうでもいいけど僕はハードボイルドについて考えると感傷的な気分になる。矛盾っぽい・・・でもハードボイルドって感傷伴うものなのか・・・?