海辺のカフカ

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)


良い小説であった。春樹の小説の中ではかなり読みやすい方だと思う。ストーリーがわかりやすめだし面白いので、春樹なにから読んでいいかわからんというような人はこれから読むと良いんじゃないかな。

春樹というのは人の感情を描くのが上手いな。

とにかくあらゆることがメタファーとして出てくる。考察しようと思えば幾らでもできそうなぐらいメタファーに溢れてる。最早メタファーって言いたいだけじゃね?ってぐらいメタファーに溢れてるし僕はメタファーって言いたいだけです。

アンダーグラウンド、ねじまき鳥等を通過したことで、宗教や社会という問題にコミットするような内容になってるというような文章をネット等で読んだし、本当にそうなのだろうけど、僕は無知すぎて、一切そういったメタファーを読み取れなかった。ネットで読んでなるほど〜確かにと思った笑

それを抱えていることがどんなに苦しくても、生きている限り私はその記憶を手ばなしたいとは思いません。それが私の生きてきたことの唯一の意味であり証でした

僕はこういうセリフに弱いです。苦しくても愛おしくて捨てられないものに弱い。

春樹には父親をと子供の関係性をしっかりと描いてほしいな。この本でもカフカ君=父´だととれば、カフカ君を通してかなり描いていると言えるのだけどもう少し丁寧にわかりやすく描いてほしい。


「僕らはみんな、いろんな大事なものをうしないつづける」ベルが鳴りやんだ後で彼は言う。

「大事な機会や可能性や、取りかえしのつかない感情。それが生きることのひとつの意味だ。でも僕らの頭の中には、たぶん頭の中だと思うんだけど、そういうものを記憶としてとどめておくための小さな部屋がある。きっとこの図書館の書架みたいな部屋だろう。そして僕らは自分の心の正確なありかを知るために、その部屋のための検索カードをつくりつづけなくてはならない。掃除をしたり、空気を入れ換えたり、花の水をかえたりすることも必要だ。言い換えるなら、君は永遠に君自身の図書館の中で生きていくことになる」